作品
2025.05.08
「幽れたる神 ─ 出雲の王」公開しました。
2年半前の旅が、ようやく“祈り”というかたちになりました。
2年半前に出雲へ旅立ち、撮影してきた素材をついに…。…編集しました。
タイトルは『幽(かく)れたる神 ─ 出雲の王』。YouTubeに公開しました!
本日はその背景や思い、そして少しだけ映像づくりの裏話をお話しできればと思います。
大国主命は「ただの恋愛の神」じゃない

私たちは、つい“わかりやすい物語”で神様を片づけてしまいがちです。
でも古代の出雲には、もっと深くて、もっと切なくて、もっと力強い物語が眠っています。
その中心にいたのが、大国主命(おおくにぬしのみこと)。
国を創り、人を治め、そして──国を譲った王。
ここに、私がこの作品を作らずにいられなかった理由があります。
(日本全国の姫を妻にした大国主命って、現代だったら女性から大叩きされそうですが、その女性から恋愛の神様として信仰されるのも不思議ですよねw)
語られなかった「国を譲った側」の視点を

私たちが学校で学ぶ「国譲り神話」は、たいてい“勝者”の視点で語られます。
高天原(たかまがはら)から使者が来て、「はい、譲ります」って……そんなに簡単な話、あります?
神様だって人間と同じです。
奪われた側には、痛みがあり、無念がある。
それを、どうしても映像として残したかったのです。
譲る側の大国主命にはどんな感情があったのでしょう?
そしてその神を、千年以上にわたって「祀り」「とぶらい」続けてきた人々の想いとは?
日本には「まつろわぬ魂」さえも丁寧に祀ってきた歴史があります。
大国主命もまた、きっとその一柱だったのではないでしょうか。
映像は語る。言葉にできない感情を。

現代の私たちの目には、歴史はいつも「勝者」の物語に見えがちです。
でも、「語られなかった側」にも確かにあった感情や記憶、そして残された土地の祈りがあります。
私はそこにこそ、日本という国の“やさしさ”の原点があるように感じるのです。
この作品は3部構成。「序・破・急」で展開します。
【序】
沈みゆく出雲の夕日、雷のような怒りを宿した無言の風景。(大国主命は雷神、蛇神ともされます)
幽閉された王の視点で、大国主命の「語られなかった記憶」を描きました。
【破】
タイムラプスとともに彩りを取り戻していく現代の出雲。(古代から現代の移り変わりを表現しています)
そこに祀られ続ける社や、人々の営み。今も息づく祈りのかたちを重ねます。
【急】
朝日が雲海の先から昇る――
本来は“日の沈む国”だった出雲で、あえて「日の出」を映しました。
それは、過去の痛みを赦しへと昇華する、静かなメッセージでもあります。
最後に映るのは、うさぎの背中

出雲大社にあるうさぎの石像。
その小さな背中が、大国主命の社殿に向かって静かに祈っています。
まるで私たちの「声なき声」を代弁するように。
「この国の美しさが、あなたの赦しでありますように──」という最後のコピーは、
そんな願いを込めて添えた言葉です。
📺 映像はこちらからご覧いただけます。
なぜ今、神話を見つめ直すのか
歴史には、語られた物語と、語られなかった物語があります。
私たちは、後者を忘れてしまいがちです。
でも、日本という国は、怨霊すら神に祀ってきた国です。
それは「祀る」「弔う」という“とぶらう”文化。
過去の痛みと向き合い、記憶として引き受け、未来へ祈りに昇華させる──。
この精神が、いまの私たちにこそ必要なのではないでしょうか。
神話全体もそうですが、日本神話の中で大国主命は謎が多い神です。諸説あり、様々な解釈がある中、ここでは、出雲王朝を奪われた大国主命の無念さに焦点を当てています。
日本神話の謎部分が多い「出雲」について、どうしても自分の視点で作品を作ってみたかったです。もちろん「こういう素材が欲しかった」など、自分の思考を再現するには足りないものはたくさんありますが、自分にできることをして、編集した映像です。
この国の、語られなかった記憶にそっと触れる。そんな小さな祈りになれば嬉しいです。
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shinobuOsawa
写真、動画、空撮からウェブや紙のデザインまで幅広く手掛けるクリエイターっぽい人。
筋トレと子どもをこよなく愛する、クスッと笑えるプチ不幸体質の持ち主。
筋トレ好きの内蔵貧弱系。親しくなるとオネエ言葉になります。
写真を画像ではなく、用紙にこだわり、オリジナルプリントとして手元に残り続けることができる作品を生み出すことが目標です。