上田義彦さんの言葉に、立ち止まった日

RICOH GR IV

少し前のことになりますが、神奈川県立近代美術館 葉山で開催されていた上田義彦さんの「上田義彦 いつも世界は遠く、」展を見に行きました。

展示を一通り見終え、出入り口で流れていた映像に、思わず足が止まりました。
画面の中で、上田さん自身が「写真とは何か」を語っていたのです。

正確な言葉は覚えていません。
それでも、その内容だけは、はっきりと心に残りました。

新年最初の記事として、その時に感じたことを、今一度振り返ってみたいと思います。
ちなみに掲載している写真は、展示とはまったく関係のない単なるスナップ写真です。

瞬間を撮るということ

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上田さんは、こんな話をしていました。

写真は「瞬間」を映すメディアであり、その瞬間を掴めることは、写真にしかできない表現だということ。

「あっ」と思ったら、考えずにシャッターを切る。
そうすれば、二度と戻らないその一瞬を、写真は確かに残せる。

それを説明する言葉として使われていたのが From the hip という表現でした。

西部劇の決闘で、銃を構えて狙うよりも、腰に下げたまま撃った方が、ほんの一瞬だけ早い。
つまり、考える前に撃つ。

写真も同じで、感じた瞬間に、心のままにシャッターを押す。
その話を聞いたとき、胸の奥に何かが刺さりました。

気づけば私は、構図や設定、方法論ばかりを気にして、目の前で起きている「今」を、取り逃がしていたのかもしれません。

考えてから撮るのではなく、感じたら撮る。

その感覚を、もう一度大事にしてみよう。
そう思わされました。

写真は鏡である

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もうひとつ、強く印象に残った言葉があります。

「写真は鏡だ」という言葉です。

眼の前の世界を撮っているようで、実はそこには、それを見つめている自分自身が写っている。
その時の感情、思考、思想。
そういったものすべてが写真に滲み出る。

だから写真を見る人は、撮った人と同じ道筋をたどって写真を見ることになる。

理由はわからないけれど、なぜか嬉しくなる。
なぜか切なくなる。
それは、撮った人がそこに至った思いを、写真に込めているからだ、と。

この話は、とても腑に落ちました。

自分は何を撮っているのか

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私はライフワークとして「日本人としてのアイデンティティを可視化する」というテーマで撮影をしています。

日本の歴史や文化、自然や風景を撮ることは、結局のところ、自分が何者なのかを確かめる行為なのだと思います。

写真を通して自分と向き合い、それを見た誰かが、もしかしたら同じように何かを感じてくれるかもしれない。

そう考えると、写真を撮るという行為が、少しだけ深い意味を持ち始めます。

畏敬の念と、目に見えないもの

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もっとも心に残ったのは、畏敬の念と、宇宙の話でした。
上田さんは、子どもの頃、仏壇に手を合わせる祖母の姿を見て育ったそうです。

山に入れば山の神様を拝み、井戸の前で自然と頭を下げる。
それは教えられたからではなく、ごく自然な行為だった。
大人になって仏教を学び、それが「宇宙と一体になること」だったと気づいた。

言葉にできない大きな宇宙。
あるいは、限りなく小さな宇宙。

それを、畏敬の念とともに写真に残していきたい。
その言葉に、自分が写真を撮る理由が重なりました。

目に見えないものを撮る

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神社の鳥居。
古い町並み。
静かな自然の風景。

私が撮りたいのは、建物や景色そのものではなく、そこに積み重なった時間や、人の祈り、言葉にならない何か大きな存在です。

それを「畏敬の念」と呼ぶのか、「宇宙」と呼ぶのかは、まだわかりません。

でも、目に見えないものを感じ取り、写真として残したいという気持ちだけは、確かにあります。

この展示を通して、自分の進んでいる方向は間違っていないのかもしれない。
そう思えたことが、何より大きな収穫でした。

写真は、空間で見るもの

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展示された作品は、一枚一枚の存在感が圧倒的でした。

画面越しでは決して伝わらない、プリントされた写真の重みと、空間としての力。

写真集も、ウェブの写真も素晴らしい。
それでも、実際に足を運び、その場で作品と向き合う体験は、まったく別物です。

展示はすでに終了していますが、また機会があれば、ぜひ体験してみてほしいです。

これからも、撮り続ける、目に見えないものを撮り続ける

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上田義彦さんの言葉を通して、自分がなぜ写真を撮っているのか、その輪郭が少しだけはっきりしました。

目に見えないものへの畏敬の念。
それを、写真として残すこと。

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2026年も、迷いながら、考えながら、それでもシャッターを切り続けたいと思います。
今年も、よろしくお願いします。

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shinobuOsawa

写真、動画、空撮からウェブや紙のデザインまで幅広く手掛けるクリエイターっぽい人。
筋トレと子どもをこよなく愛する、クスッと笑えるプチ不幸体質の持ち主。
筋トレ好きの内蔵貧弱系。親しくなるとオネエ言葉になります。
写真を画像ではなく、用紙にこだわり、オリジナルプリントとして手元に残り続けることができる作品を生み出すことが目標です。

sipe-ot シペ・オッ ─ 鮭と生きる町・標津|大沢忍個人作品

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